飢餓も脱水も苦しくない

大往生したけりゃ医療とかかわるな医療 中村仁一

人間は、生きていくために飲み食いしなくてはなりません。
これは当たり前のことです。
ところが、生命力が衰えてくると、その必要性はなくなるのです。
飢餓では脳内モルヒネ物質が分泌され、いい気持になって、幸せモードに満たされるといいます。
また脱水は、血液が濃く煮詰まることで、意識レベルが下がって、ぼんやりとした状態になります。

以前、病院勤務の頃、息子の所に身を寄せていた寝たきりの母の様子がおかしいと、病院に運び込まれてきたことがあります。
夏の暑い盛りで老母が充分に飲み食いしなかったため、3日目には昏睡の一歩手前まで意識レベルが落ちていました。
そこで薄い食塩水をどんどん点滴して、濃くなった血液を薄めたところ、3日目に意識が戻りました。

意識が普通になったところで尋ねると、直近の数日間のことは何も覚えていないとのことでした。
つまり、苦痛を全く感じていなかったということです。
もし、あのまま手当てをしなければ、何の苦痛を感じないまま、あの世に移行していたということになります。