言葉には言霊がある

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

ちょっとしたことから、自分を追いつめて苦しんでいる患者さんを見ながら、そういう心理を等身大で理解できない自分は、精神科医としてはまことに至らないのではないかと悩んでしまうこともあった。
だが少し前から、私は前立腺肥大症に悩むようになった。
この病にも、経験者でなければ分からない苦しみがある。
何よりおしっこが近いので、会議や講演、旅行などでは絶えず、途中で尿意をもようおしたらと戦々恐々しているのだ。
そうした病気体験から、最近では、私も少しは患者さんの悩みを理解できるようになったのではないかと思っている。

病気や失敗は、自分で望んでそうなるものではない。
だからこそ、「何で俺がここで挫折しなけりゃならないんだ・・」と考えるのではなく、「自分はまたとないチャンスを与えられたのだ!」と考え方をスイッチしてしまった方がいい。
すごく落ち込んでいて、とうていスイッチなどできそうもないというなら、言葉だけでもいい。
「病気になるなんて、自分は運がいい!!」と何度も口にすることだ。
言葉には言霊があり、何度も口にしていると知らず知らず、その気になってくることがあるからだ。