補導

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

宮田さんが父親に持たされた「身元証明の手紙」は、非常に役立ちました。
予想通り、15歳の少年が乞食生活をしていると、警察は知らん顔をしていられません。
補導された回数は、数選ればきりがないくらいです。
それでも例の手紙のおかげで、彼は補導を恐れることはありませんでした。
親が公認ということになれば、警察も手の出しようがありません。
いつの頃からか、宮田さんは警察を恐れるどころか、逆にその機会をチャンスに転じるようになりました。
補導されて、例の手紙を見せれば、警察は必ず実家に電話します。
すると父親が出て「そいつは修行中だ。ほっておいてくれ」と、電話を切るのです。
そこで宮田さんは言うのです。
「ほーら、俺は嘘をついていない。ねえ、警察って人を助けるのが仕事ですよね。掃除でもなんでもするから、今晩泊めて下さいよ」

放浪の旅を続ける少年を面白いと思ってか、ご飯を食べに連れて行ってくれる警察官も少なくありませんでした。
泊まる場所に困ったら、わざと警察の前をウロウロしたこともあるといいますから、宮田さんはまさに知恵者です。