結婚資金 2

「お母さんに代われ」と父に言われ、私は一人部屋で泣きました。
どうすればいいのか、私にはもう分りませんでした。
しばらくすると母が、貯金通帳を持って部屋に入ってきました。
母は私に貯金通帳を見せ、やさしく語りかけました。
「心配しなくても大丈夫だよ。ほら、これが裕ちゃんの通帳。結婚資金として、お母さんが毎月少しずつ貯金しているんだよ。今これだけあるから、心配しなくても大丈夫、ねっ」

そんな貯金があったことも知らなかった私は、心配かけてしまった申し訳なさと、子供の将来を思う母のあたたかさに、なお、泣けて仕方がありませんでした。
この時、私は父をひどい人だと思っていましたが、今はそう思いません。
誰かが叱って下さらなかったら、事の重大さに気づかず、勉強しようという気も起らなかったかもしれません。
実際、これ以降「大学で本当にやりたいことをやろう」と真剣に考え、精一杯勉強することができました。
そして今、大学で「人生をかけても悔いのないもの」と巡り合うことができたのです。
両親に、心から感謝せずにはいられません。