私の原子

上京物語 喜多川泰

変な質問かもしれませんが、手は何からできていますか?
そう、炭素や酸素、水素、窒素といった原子が組み合わさってできています。
でも原子は自分でつくれません。
人間は、自分の手をつくる材料を外から取り入れるしかありません。

原子は生物ではありませんから、増えもしなければ減りもしません。
今の自分をつくっている原子は、昨日はお米だったり、先週は牛をつくっていた原子だったかもしれません。
そんな原子が組み合わさって、今の自分があります。

ものをつくる部品である原子は、死にもしなければ増えもしません。
つまり、ずっとこの世に存在していました。
私たちをつくっているこの原子は、地球が誕生した46億年前からこの地球上にあったものです。

生きている間だけ、私たちはこの原子という部品を拝借して生きています。
絶えず、新しいものと古いものを入れ替えながら生きているのです。
原子はいつも飛び回っていますから、私をつくっている原子は、明日は岩になっているかもしれません。
そう考えていきますと、ちっちゃな悩みに苦しんでい生きているのが不思議になります。