生きる 2

27歳のスキルガンになった男性は、金融機関に勤めていて、責任感が強く、与えられた役割を果たすために努力を惜しまなかったそうです。
周囲からもその能力を認められていましたし、将来は海外に赴任したいと考えており、プライベートな時間は語学の勉強に充てたり、体力作りにジムに通うというような生活をしていました。
つまり彼にとって、五年先、十年先にある未来の夢を実現することが人生の目的であり、そのためのあらゆる努力をいとわなっかたのです。

しかし彼は、進行性のスキル胃ガンに罹患したことによって、自分に間もなく「死」が訪れることを知りました。
描いていた夢は、決してやってこないということを悟り、日々の努力の先に目標に据えていたものが見えなくなったのです。
彼は、大混乱に陥り、生きる意味が分からなくなってしまいました。
10年先がないとしたら、人は何のために今を生きるのだろうか?
本屋さんであらゆる本を手に取ってみましたが、ほとんどの本は人間が長生きすることを前提に書かれており、むしろ気がめいってしまったそうです。

彼は、カウンセリングを受けることにしました。
カウンセラーは話しを聞き終わると言いました。
「あなたは、将来のために今を生きてきたのですね。別の言葉で言うと、将来のために今を犠牲にしていた。だから、今の生き方が分からないということですね・・」
彼は「その通りだと思います。自分でどうしたらよいか、一緒に考えていただきたい」と言いました。