延命治療

1,000人以上看取った緩和医の話し

例外なく、人は最期には食べられなくなります。
食べられないから最期を迎えるのではなく、最期が近くなるために食べられなくなるのです。
進行した腫瘍やそれに対抗する免疫細胞等によって出される化学物質によって、あるいはその他の代謝の変化によって、さらに摂食機能の低下と消化吸収機能の低下から、人は食べられなくなり、食べても栄養を利用できなくなります。

それでも患者の周りの人は元気になってほしいと願い、食事の接種を勧めます。
どうやっても食べられない本人にとっては、こんなに辛いことはありません。
病気を大方体で感じ取っていて、早く逝きたいと思っている本人に対し、子供たちは必死に望まぬ延命治療を施しています。
そして、それが親孝行だと思っているのです。
本人はそれを知っていて、苦痛に耐えて、早くこの時間が終わってほしいと願っているのです。

一生懸命食べさせても、命が延長することは残念ながらないのです。
その反対に、食べないから衰弱のスピードが速まるということもありません。
せめて、本人が好きなもの、なんとかおいしいと思えるものを少量与えてあげることが重要なのです。