延命治療の果てに

うまいこと老いる生き方

92歳精神科医 平均寿命を超えたような老人が延命治療を受けると、ほんとうにろくなことがない。たとえ命が助かったとしても、急激に運動能力が落ちるから、ほとんどの人が寝たきりになる。それに、認知症も一気に進んでしまうことが非常に多いしね。全身の機能が衰弱して食事も満足に呑み込めなくなって誤嚥しやすくなり、口からの食事は禁止になって中心静脈で高カロリーの輸液を24時間流されるか、鼻からチューブを突っ込まれて、流動食を流されるかのどちらかになるんや。

54歳 高カロリーの輸液を入れるには、鎖骨の下や、太ももの付け根にある太い静脈に針を刺してカテーテルを留置する必要があります。しかし、カテーテルを体内に留置しておくと、どうしても感染が起こってくるため、1か月に1度は入れ替えのため、痛みを伴う処置をしなければなりません。そのため、しばらくすると、皮膚から胃に穴をあけて胃ろうを作りましょうか? となる人が非常に多いのですね。

92歳 あの胃ろうだけは絶対御免やな。私にとって、そんな状態で生きるのは拷問のようなもんや。私は自分でご飯が食べられなくなったときが、死に時やと思って生きているよ。