医者の都合で・・・

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

医療機器が進歩したおかげで、放射線は昔よりもずっと細かく、正確にかけられるようになりました。
狭い範囲にピンポイント照射だけでなく、デコボコしたがんの形に合わせて照射したり、呼吸や尿の影響を受けて動くがんを追いかけて照射することもできるようになっています。

機械の性能が上がっているのですから、正常細胞にかかる放射線は少なくなって副作用も減るはずです。
ところが、そうはなっていないのです。
なぜかというと、医者が放射線をかけ過ぎるのです。

かけ過ぎる理由の1つは、治療するのが商売だからです。
これは外科医や抗がん剤専門医と同じで、患者さんに「放射線の必要はありません。放っておくほうがいいですよ」などと言ってしまっては、自分の存在意義を否定することになります。
だから、次々に出てくるがんを、そのたびに放射線で叩いたり、検診で見つかった自覚症状のないがんにまで放射線をかけたりするのです。

もう1つの理由は、医者の世界では、数を治療することが力になるという事情があります。
圧倒的に手術が多い日本では、外科医が大きな力を持っています。
でも、放射線治療を受ける人が増えれば、放射線科医の地位が上がります。
放射線の効果が高いとなれば、がん治療ワールドでの発言力も増すのです。