北欧には寝たきりの老人は少ない

私はがんで死にたい 小野寺時夫

欧米、特に高齢者介護が充実しているといわれる北欧の老人施設を視察した日本人は、寝たきりの老人のいないことを一様に不思議がるといいます。
日本のように、うまく歩けなくなったらすぐに車いすに乗せたり、自力で食べにくくなったら介助して食べさせるのとは違い、どんなに手間暇がかかっても、自力で歩き、自力で食べるように仕向け、それができなくなっても胃ろうを入れたりするなど、日本ほどの世話をしないのです。
日本が世界トップクラスの長寿国である裏には、「どんな状態でも生かしておくのが人命尊重」という考えがあるからなのです。
本当は、介助して食べさせるほうが手間がかかりませんし、歩かせて骨折でもされたら介護者の責任になるという気持ちがあることも否定できません。

私はがん検診を一度も受けたことがありませんから、何かの症状が出て、がんが発見されたときには高度進行がんでしょう。
もちろん手術も抗がん剤治療も受けるつもりはなく、自然の経過に任せて最期を迎えたいと思っています。
しかし、確率的には認知症のガン患者になる可能性が高いと思っています。
認知症が進んだ時に、私がどうしてもらうかは判断や依頼能力がなくなる前の今のうちに、文書にして後輩の医師やホスピスのスタッフに頼み、娘たちに念を押しておくほかはないのです。