信念を手放し、他人にゆだねる

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊

幼い子どもがいる親御さんや、会社を経営していた社長さん、財産がありすぎるお金持ちなども、人生の最終段階で苦しむ方が多いようです。
この世に残していく子どもや会社、お金のことが気がかりで、生きていたいという思いが強いためです。

しかし、こうした患者さんたちも、苦しみ抜いた果てに、少しずつ自分が抱えていたもの、それまで頑なに守っていた信念を手放し、他人にゆだねるようになります。
自分で何でもできて当たり前という思いや、役に立たない自分は価値がないという思いから解き放たれ、他人の世話になることを受け入れたり、子どもの生末を誰かに託したり、会社やお金を後継者に譲ったりするようになるのです。
手放し、ゆだねる覚悟を決めた患者さんからは、怒りや悲しみ、焦りなどが少しずつ消えていきます。

そのためには委ねる相手が必要ですが、それは必ずしも人でなくてもいいと私は思います。
自然が大好きで、自然が常に自分を守ってくれていると言っていた患者さんや、信仰心が篤く、神さまが守ってくださっているから大丈夫、何も怖くありませんと言っていた方もいらっしゃいました。

いずれにせよ、委ねる相手をしっかり信じることができれば、たとえ明日が人生最後の日だとしても、人は穏やかに過ごすことができるのではないかと私は思います。