何でも早く、思い通りっておかしくない?

いのちの言葉 JT生命誌研究館館長 中村佳子

また、人間も生き物ですから、赤ちゃんを産むことも思い通りにならないし、じっくり時間をかけなければ育っていきません。
でも今は、思い通りの赤ちゃんを産めないかな、早く大きくならないかなと思うので、赤ちゃんがぐずっただけで虐待するような、ちょっと信じられないことも起きています。
これは「何でも早く、思い通りに」という考えを生き物の世界まで持ち込んでいるために起こっているのではないかなと思うのです。

生き物の中には、38億年という長い歴史が入っています。
私たち人間が、この地球上に登場したのは20万年くらい前です。
この地球上にいる生き物たちの中では、一番後に登場したのです。
人間も生き物ですから、いろいろな物を食べたり、自分の身を守ったりしなければ生きていけません。
そのためには、周りの生き物のことを知ったり、どれが食べられて、どれに毒があるのかなどを理解しておかないといけないわけです。

学者というのはだいたい先進国にいますから、温帯の生き物のことは良く調べられても、熱帯のことはあまり調べられていなかったのです。
そこで20年前くらいから熱帯を徹底的に調べようということになりました。
ある一本の木の中にいる虫や小動物を集めて、名前を調べてみると、名前がついている生き物はたったの3%だったのです。
逆に言うと97%は知らない生き物だったのです。