トムとアン 6

トムとアン、そして息子のコリンも家族に加わって5年間をインドネシアで過ごしました。
ジャカルタで1年間、地方で4年間、トムは大規模な公衆衛生プロジェクトに参加しました。
現地の母親たちを対象に「子供の病気の対処法」などを普及させ、「栄養改善」のための教育プログラムを策定し、「予防注射」の徹底化にも尽力しました。

「実にゆったりとした毎日でした。いろんな風俗や習慣に接することもできましたし、ランチはいつも自宅に帰って子供たちと一緒にのんびり食べるんです。家庭生活が充実して、本当に素晴らしい5年間でしたよ」とトムは振り返っています。

トムとアンはやがて祖国に帰ることにしました。
子供たちにアメリカの文化も教えなくてはなりませんし、トム自身も海外ボケになることは避けたかったのです。
帰国するとケロッグ財団からすぐに声がかかりました。
財団の代表は、かつてミネソタ大学のプロジェクトで、トムとともに働いていた仲間だったのです。

現在のトムはこう語ります。
「生活のために働くという意識は未だに薄いですね。仕事はもっと別の目的でやるものだと思っています。たとえば、真の自分を生かすために。また真の自分の何かを少しでも役立てるために・・」

妻のアンはどうでしょうか。
トムが何か大事なことを決断するとき、彼女はこう尋ねるのだといいます。
「そうすることで、あなたと家族が幸せでいられるのでしょう?」