ぶらぶらするのが楽しい

いのちの言葉 臨床心理学者 河合隼雄

ある高齢者の話しです。
その方は、本当に良く働いた方で、年金や蓄えもあり、ぶらぶらと暮らしておられました。
それを見てお嫁さんが「何か楽しい趣味でも見つけられたらどうですか?」と言います。
息子さんも「もっと、積極的に楽しまなあかん。ぶらぶらして!」と怒ります。
でも、その高齢者の言い分を聞いて、私はなるほどと思いました。
「息子も嫁も楽しめというけれど、私はこれまで一生懸命に働いてきたから、ぶらぶらするのが楽しいんや・・・」

反対にこんな方もおられます。
その方は、歳をとったら趣味が大事だと、早くから囲碁を習われていました。
ところが、あるところから、急に面白くなくなってしまいました。
それは、一生懸命に碁を打っていて、強くなること、勝つことが重要になっていたので、歳をとって碁が弱くなったときに、負けることに腹が立って仕方がないんですね。
知らないうちに、趣味ではなくて、仕事のようになっているわけです。
趣味を持つにしても、勝ち負けにこだわらず、楽しむということを心に入れていかなければならないと思います。

自分で自分にご褒美をあげる、褒めてあげるというのもいいですね。
健康のために、歩いて帰ってきたら石を一つポンと置いて、それが自分に対するご褒美なんだと喜んでおられる人もいます。
何か、やり遂げたときに「ようやったな。今日はこれを飲ませてやるぞ」と、上等のワインを開ける人もいます。
いろいろな楽しみを自分で演出するのもいいと思います。