できるだけ困らせてもらうのが最高の教育

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

宮田さんはパリに渡っても、いきなり生活が変わるわけではありません。
いわば乞食のフランスデビューです。
フランスは移民の多い国。
いろんな人種であふれかえっており、難民に対するフランス語教育もなされるなど、その手厚さは宮田さんにも好都合でした。
観光客にサンドイッチを売ったり、スペインに渡ってTシャツを売ったり、現地ガイドの真似事をしたり・・・。
さまざまな経験を重ねて帰国し、現在、宮田さんは会社を経営するようになりました。

「宮田さん自身は、お子さんにどんな教育をしてはるんですか?」
お話をもっと聞きたくて、居酒屋に移動してから、僕は興味津々で尋ねました。
「息子がいて、今一人で暮らしていますが、一切援助はしていません。かなり小さなアパートに住んでいるんですが、たまに家賃を何カ月も滞納して、大家さんから電話がかかってくるんです」
「ほう、それだけ払ってあとは放任ですか?」
「いいえ、最終的には保証人になっている私が払いますが、大家さんにお願いするんです。どうか催促の電話をしたり、ドアに張り紙をしたりして、できる限り厳しく取り立ててくださいと。そうすれば、自分で必死になって家賃を工面するでしょう。あやしい金融機関に駆け込むのは困りますが、できるだけ困らせてもらうのが最高の教育になります。だから思う存分、嫌がらせをしてくださいと、お願いしてるんです」