男性と女性の生き方の違い

ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛

「たばこはやめない。それでガンになってもいい」
そう公言している人も多いが、実際には、がんと診断された時点でほとんどの人が一度は禁煙しているのが現実だ。
それまで数十年間喫煙していて、今更やめても効果がないという考えも一部にあるが、やはり実際にガンと宣告されても喫煙を続けるというのは、逆の意味で強い意思が要求されるということなのだろう。

私が患者さんと接していて思うのは、重い現実を前にして、男性患者さんと女性患者さんでは対応の仕方が違うということだ。
男性は過去の思い出に浸りがちで、元気な時代に自分が拠り所としてきた、様々な価値観や習慣から自由になることができない。
その点、女性は日々を生きるリアリストが多い。
過去のことに拘るより、その日を元気に、体調よく、苦しまずにどう生きるか。
それに集中できる人が多い。

ホスピスにおいても、患者さん同士のコミュニケーションが活発なのは圧倒的に女性である。
同じ立場の患者さんたちが1か所に集まって、いろいろおしゃべりをしながら、意見を交換して悩みがあれば共有する。
何かイベントがあれば参加して、笑い、楽しむ。
そうしたことがごく自然にできるのが女性の患者さんたちである。
男性はその点、女性に比べた場合に社交的な人が少ない。
社会的な立場が高かった人が、施設内で孤立するようなケースもあり、精神的な悩みを抱え込んでしまうこともある。