杜子春 2

三度、都の西門の下へ。
やはり老人が現れ、黄金を与えようとしたが杜子春は断った。
「人間というものに愛想が尽きたのです。人間はみな薄情です。私が大金持ちになった時には、みんなぺこぺこしてお世辞を言いますが、一旦貧乏になってごらんなさい。やさしい顔さえ見せてくれません。そんなことを考えると、たとえもう一度大金持ちになったところで、何にもならないような気がするのです」
つづけて杜子春は老人に言った。「あなたは仙人でしょう。私を弟子にしてくれませんか?!」
老人は意外にも簡単に引き受けてくれた。
二人は仙人の修行をするために、峨眉山へ向かった。

杜子春を岩の上に座らせて、老人は厳しく言いつけた。「いろいろな魔性が現れて、お前をたぶらかそうとするだろうが、たとえどんなことが起ころうとも決して声を出すのではないぞ。もし、おまえが一言でもしゃべったら、おまえは到底仙人にはなれないものと覚悟しろ。よいか。天地が裂けても黙っているのだぞ!!」
「はい、決して声なぞだしません。命が亡くなっても黙っています」
杜子春は誓った。