愚痴を聞いてケロ

家族に少しでも楽な生活をさせてあげたいと、仕事をがんばって帰ってくると「お帰りなさい」という言葉の代わりに「孫が熱出して寝ているの。静かにして、うるさい!」という第一声が響く。
働いて稼いでいるということは、妻にとっては1点のポイントにもならないようだ。

「あなたは育児を何一つやらなかった」と事あるごとに言われる・・。
 そりゃあ後ろめたい気持ちはあるが、心の中で「その代わり一生懸命働いていたんだぞ・・。営業という成績第一主義の世界で、先輩たちに苛められながら、見知らぬ家に飛び込み営業をして『保険?そんなの、いらないわよ』なんて冷たくあしらわれたって、『ここで負けちゃあお仕舞だ。家族を養えないぞ!』と自分に発破をかけ頑張ってきたんだ・・」と慰めている自分がいる。

 こちらの方は妻の粗が見えても何も言わず、我慢して寛大に接してきたんだぞ・・と言ってやりたい。(でも言えないから溜息が出る)
 もう少しやさしく接してくれてもいいだろうと、つい思う。

でも昨日の夜中、孫がインフルエンザで高熱を出して眠れないでいるとき、妻は暗い部屋で正座をし、孫が眠るまで何時間も孫の手を握っていたのを見た。
その時自分は・・・・酒を飲みながらテレビを見ていた、う~ん。

  自分がインフルエンザに罹ってしまうことも厭わず、孫に尽くしている妻の姿を遠巻きにして、感動している自分がいた・・。
「ああ、やっぱり妻には勝てない」と悟る。

「俺は家族のために頑張っている」というプライドなどは捨てて「手柄はすべて妻に譲ろう」と思うのだった。

 「自分の方が大変だ」と悲劇のヒロイン気分に浸って陶酔するよりも、一歩譲って妻の気が鎮まるのなら、その方が平和でいいじゃないかと思い直す。
「いつも、ありがとう」「すまないね」と心の中で呟く。

 ああ、完敗!!だ。