高齢者の仕事

みっともないお金の使い方 川北義則 

子どもに財産を残したい、この気持ちは共通の親心かもしれないが、かえって仇になるかもしれない。
莫大な財産があるなら別だが、普通はみずからの第二の人生の充実に使った方がいい。
私自身も自分たちの衣食住にはお金は使うが、子どもに財産を残そうなどとは思わない。
一代で大きな財産を築いた人が、子どもに財産を残すのは、残そうとしたのではなく、結果論だという。
残したお金を、後半の人生で使おうとしても、それだけの時間的余裕がない。
稼ぐ人間は、稼ぐだけで寿命が尽きてしまうというのである。

高齢者には、高齢者にしかできない「大きな仕事」がまだ残っている。
それは、生きているうちに、自分のお金をできるだけ使うことだ。

アンケート調査によれば、自分たちの財産は子どもに残さず、自分自身で使いたい。
その代わり、老後のことは子どもに頼らず、自分自身で解決すると答えた人が70%近くにのぼった。
子どもたちの考え方はこうだ。
親の老後は、親が自分の財産を活用し、親自身が解決すべきである。
このような考え方をする子どもは87%に達しっている。

かつて、何代も続いた老舗の当主に取材したことがある。
彼らが家を守る意識は非常に強く、財産を毀損せず家を存続させることに全力を傾けていることがよく分かった。
同時に「私はせっかくお金持ちの家に生まれ、一生遊び暮らせるというのに、墓守のように財産を守らなければならない跡継ぎの人生なんてつまらないものだ」と思ったそうだ。