集金を持ってこれない生徒

ココロの架け橋 中野敏治

集金日にいつもお金を持ってくるのを忘れる生徒がいました。
「明日は忘れるなよ」と声をかけても、翌日もまた忘れてしまうのです。
こんな状況が毎回続いたので、仕方なく家庭へ連絡しました。
「集金日が過ぎていますので、明日、お子様にお金を持たせてください」と伝えました。
母親からは「子供から聞いていました。分かりました。明日持たせます」との返事をいただきました。
電話をして2日後に彼は集金費を持ってきました。

いつものように家庭に連絡しても、彼が集金を持ってこない月がありました。
数日後の放課後、彼の家を訪ねました。
彼の家の中からは大きな声が聞こえてきました。
酔っている感じの男性の声です。
外は薄暗くなっていました。
彼はもう家にいるはずです。
玄関を開け「こんにちは」と大きな声をかけると、中から男性の酔ったしゃべり口調で「なんだ!」と大きな声が返ってきました。
玄関に出てきた男性は、彼の父親でした。
集金をもらいに来たことを伝えると、いきなり上半身裸になり、背中の大きな刺青を私に見せたのです。
私はその刺青を見ながらも、この父親に「集金をもらいに来ました」と告げました。
酔っているせいもあり、なかなか話が進まない状態でした。
奥から彼の母親が出てきました。
父親を家の中に入れると、お財布から集金額を差し出しました。
母親は「驚かせてすみません」というと、家の中に入り玄関を閉めてしまいました。