贅沢に慣れてませんか

がばいばあちゃんの口癖 島田洋七

うまくいかない、思い通りにならないと悩んでしまう気持ちの中には、贅沢が一杯入っています。
あれもできなかった、これもできなかった、あれもこれもなんて欲張っているから、思い通りにいかないことがどんどん増えていってしまうんです。

人間は苦しかったときのことを忘れてしまいますが、それはそれで、いいと思うんです。
悲しみは忘れていかなければ、前には進めないからです。
しかし、今、ちょっと思い出してみるときが来ているんじゃないでしょうか。
一つ一つのことをありがたいと思ってみれば、今自分が思い通りにいかないと感じていることも、いかに贅沢か分かるでしょう。
贅沢に慣らされてしまったために、近頃ではまた、生活の中で工夫することもだんだんと忘れられているように思います。

3つの学校で掃除の仕事をしていたばあちゃんは、学校が始まる前にトイレと職員室の掃除を終えないといけないので、朝の4時に家を出ていました。
「ばあちゃん、もう行くの?」
「うん、もう行かんば」
「ばあちゃん、寒いやろ」
「冬は寒かばい。冬は雪降って当たり前やないか」
朝の4時、酷寒の中、デッキブラシを持って下駄をはいて出かけていくばあちゃんの姿を、破れた障子越しに何度見送ったことでしょう。
寒い寒いと言ったら惨めになります。
それを当たり前と受け入れていければ、乗り越えていくことができるんです。

人はいっつも、夏は夏で「暑い、暑い、早く涼しくならないか」、冬は冬で「寒い、寒い、はよ夏になれ!」って。
どっちやねん!!