言葉・・・

ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛

43歳の誕生日を人生初の入院で迎えます。
10月に肺がんであることが分かり、神戸医療センターにお世話になっています。
医学の進歩に期待しつつ、あと何か月なのか、何年なのか、残された時間を思う存分楽しみたいと思います。
今後は家族との時間を優先しつつ、仕事や趣味をほどほどに楽しみながら、余裕があれば自身の体験を緩和ケアの普及啓発という形で社会に還元したいと思っています。

私を奮起させ、アドレナリンの分泌を促進させてくれたのは、多くの方々のたった1つの言葉だった。
「何もできないけれど、とにかく、祈っています!」
言葉が、人を救いもするし、殺すこともあるというのは本当である。
たとえば、医師が同じ症状の患者さんに同じ薬を処方したとしても、そこに患者さんを安心させるような適切な言葉があれば、薬の効果は倍にもなるし、ゼロにもなるということを、私は実際に経験してきた。

入院中、以前から緩和ケア研修会などでお会いし、よく知っている女性医師がひょっこり病室に顔を出してくださった。
母と子ほどの年齢差があるその女性医師が、私の肩を抱き発した言葉と、いつもひょうひょうとしている父がくれた誕生日カードに書かれていた言葉はまったく一緒だった。
「代われるものなら代わってやりたい!」
私のために心を痛めていることに対する申し訳なさと、私のことを思ってくれている深い愛情を感じ、涙が溢れてきた。