素直なのにうまく表現できない彼ら

ココロの架け橋 中野敏治

警察に補導されたこと、不登校になったことなど、いろいろなことを話しだすのです。
しばらくすると、一人の少年が「さあ、帰るか」と声を出しながら腰を上げ、その晩は帰っていきました。
彼らとお祭りで出会ってから2年が過ぎた頃です。
小雨の降る夜でした。
地域で気になる場所を中心に、地域の方々と一緒に懐中電灯を持ってパトロールを行いました。
ある場所まで来ると人に気配がしたのです。
近づいてみると10人近い青少年が集まっていました。
中高生らしい男女、バイクに乗っている男子、改造したような車も乗りつけていました。
異様な雰囲気の中、その集団に近づいていきました。
すると、その集団の中にいた1人の男子が「あ~」と声を出し、私に抱きついてきたのです。
驚きました。
2年前のお祭りで出会った彼でした。
「よく覚えていたな」と声をかけると「あいつもいるよ」と、あの時一緒にいたもう一人の青年も顔を出し、私に握手をしようと手を出すのです。
「ここで何をしているの?」と彼らに声をかけると、「ただいるだけだよ」という返事。
「こんな時間に年下の子も一緒にいれば、みんなお前たちの責任になるぞ」と柔らかい口調で彼らに伝えました。
「わかったよ、今、駅までこの子たちを送っていくよ」との返事。

彼らが駅から戻ってくるまで待っていました。
彼らは戻ってくると私に、もうみんな帰ったから大丈夫だよ」と声をかけました。
その後、まだ仕事が見つからないこと、仲間といると安心することなどを話し始めたのです。
そのままではいけないと思っている彼ら。
でも、今の生活からなかなか抜け出せない彼ら。
後輩を気づかえる本当はやさしい彼らなら、きっかけがあれば必ず本当の自分、やるべきことを見つけられると信じています。