異なる価値観を受け入れる

70歳からの選択 和田秀樹

「こんなことを言うと嫌われるのではないか」という不安から言葉を飲み込んでしまう人もいれば、すぐに感情的になって素直になれず、相手との関係を壊してしまうような人もいます。
前者の場合、相手との間で「本音で言いたいことが言える」「何を言っても関係性が変わらない」という安心感がないために、ものが言えなくなるわけです。
心理学者のアルフレッド・アドラーは、「こんなことを言ったら嫌われるかもしれない」という心配をしないで、素直に自分の思いを伝えられる「共同体感覚」が大切だと言っています。
こうした共同体感覚を相手と構築するためには、相手との違いを受け入れ、異なる価値観を尊重することが重要になってきます。
ところが、年を重ねると前頭葉が萎縮してくるため、次第に異なる価値観を受け入れることが難しくなってきます。

次第に、これまで仲の良かった親友と話しが合わなくなったように感じて疎遠になってしまう、あるいは付き合いも悪くなって飲み会にも顔を出さなくなることが多くなるのです。
前頭葉は怒りを含む人間の感情を抑制する機能も持っています。
高齢者になると怒りっぽくなると言われますが、実はそうではなく、怒り出した時にブレーキがかかりにくくなるのです。