水より携帯電話の方が大事?

いのちの言葉 JT生命誌研究館館長 中村佳子 

最初に、生き物のおもしろさ、特徴について考えてみます。
私たちは、自分たち人間が生き物であるということを知っていますし、当たり前だと思っています。
でも、こんな話があるのです。
若い人たちにアンケートを取って「何が一番大切ですか」と聞いたら、一番最初に挙げられたのは、携帯電話だったそうです。
ところが、その若い人たちをどこかの島へ連れて行って、自給自足の生活を体験してもらった後に、同じ質問をすると、今度は「水」と答えたそうです。
やはり、生き物にとって一番大切なのは「水」なんですね。

よく、空気、酸素が大事といいますし、確かに私たちは酸素を吸わなければ死んでしまいます。
けれども、大昔の地球には酸素がなかったのです。
ですから、そのころから生きてきたバクテリアのようなものの中には、酸素があると困るものもあるんです。
でも、水があったら困るという生き物はありません。
逆に水がなくては困るのです。

日常生活では、水は蛇口をひねれば出てくるものと思っていますから、携帯電話の方が大切だということになってしまうのです。
これは、生きているということの基本を、日常的に考えることが少なくなってきているからではないでしょうか。