死を受容すること

ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛

私1人だけがガン患者ではない。
毎年100万人の日本人が、新規のガン患者となっている。
医師という職業上、彼らがそれをどう受け止め、患者としての人生をどう生きたかを知る立場にあった私は、ある意味恵まれた環境にあった。
死を受容し、それぞれの美学、美意識を亡くなる直前まで貫かれたガン患者さんをこれまで何人も見てきた。
そもそも、人間はまだ死にたくないと叫びながら息絶えることはできない。
最期の数日は意識レベルが低下することがほとんどで、その時点で少なくとも精神的な苦しみは感じにくくなっている場合がほとんどだ。

人は知らないことに不安を感じ、分からないことを恐れる。
私はガン患者の発症から最期までのプロセスを職業上知っているため、闘病における肉体的苦痛については、それほど心配しないですんでいる。