正善性

人は誰でも正善性を持っていると思います。でも残念なことに、勢いがありエネルギーに満ち足りて猛々しいときには、そのことになかなか気づきません。

ホスピスに入院されている人がホスピス医と話をしている場面です。

「先生、私にはやさしさが足りなかった。先生たちが、他人のために一生懸命になれるのがすごいよ。自分が成功するためにたくさんの人を犠牲にもした。僕に関わった人たちは幸せではなかっただろうな。」
「けれども私たちはあなたに会えて不幸せではないですよ」
「それは・・多分僕の心持が変わったからかもしれません。だから先生たちの印象も違うんだと思いますよ。昔の僕はひどかった」
「でも、気づかれたのならいいのではありませんか」
「えっ」
「人にやさしくしたいとそう思えるようになったのだから、いいのではないですか」
「・・・・」
「それに気づいただけで幸せだと思いますよ。一生それに気づかずに亡くなる人だっていますから」

真にやさしい人は、死を前にして後悔が少ないと言います。他人にやさしくしてきた人は、死期が迫ったとき、自分にも心からやさしくできるからです。

人をいじめることがよくあるのなら、心を入れ替えたほうがいいとホスピス医はいいます。やさしさが足りないのなら、やさしさを意識したほうがいいといいます。なぜなら、それらは死が迫ったときの後悔の一因になるからです。