本来無一物

関大徹 曹洞宗住職の書より

70歳を超えてから、私の体を気遣って、寺の者は私に托鉢をやめるように勧めてくれた。
私は、托鉢のために2,000足からの草履を履きつぶしている。
しかし、この辺で托鉢をやめる気など毛頭ない。
「食えなんだら食うな!」であり、まだ五体の動く間に托鉢をやめようというのは、食うなと命ぜられるに等しい。

私は揮ごうを頼まれると「本来無一物」と書くことにしている。
呱々の声をあげたとき、モノを持って生まれた赤ん坊があるか。
余りある金をあの世に持って行った富豪があるか。