７０歳からの選択 和田秀樹
高齢の人の場合、むしろ「自らあきらめてしまったがゆえの後悔」が非常に多いように思います。
それは「世間の常識」や「医療の常識」にとらわれすぎて、やりたいことを我慢してしまったがゆえの後悔だと感じています。
「もう年だから無理」「健康のことを考えるとやめた方がいい」「そんなことをしていると長生きができない」・・・周りからそう言われ、自身もそう考えることで、やりたいことを自粛してしまう、そういうことが多いのではないでしょうか。
しかも、そうした我慢を強いる一因となっているのが、私たち医者です。
私が長年違和感を持っていたのは、高齢者自身もその周りも「長生きする」ことが目的化してしまい、様々な我慢を強いることになっていることです。
脂っこいものを控える、タバコをやめる、あるいは危ないから運転免許は返納する、老後資金が不安だからと外食や旅行も控える・・・、そういった我慢を、長生きするために高齢者自身も周りも当然のこととしています。
しかし、それで長生きできたとしても、本当に豊かな人生を送れるのでしょうか。
人生の最期に後悔なく、「いい人生だった」と笑って逝くことができるのでしょうか。