彼女のための卒業証書授与式

ココロの架け橋 中野敏治

席に座るように彼女の肩をたたきました。
そして、職員席に戻ろうとしたとき、彼女の口から「ありがとう!」と。
私は心が震え、声を出すこともできませんでした。
学校長が職員席に戻った私の後ろにきて、小さな声で「彼女に卒業証書を授与するから、いいね」と言ってくれました。
涙で「はい」という返事もできませんでした。
そっと、彼女に走り寄り「今から卒業証書を授与するから、いいね」という私の涙声に、「はい!」としっかり、はっきりと返事をした彼女でした。

司会者が式場に響くように「ここで、もう一度卒業証書授与を行います」と伝えてくれました。
「平成〇年度卒業生 〇〇」という私の声は、自分でも涙声で声になったかどうか分からない状態でした。
彼女の「はい!」という声。
クラスメートのみんなが見守る中、彼女はステージに上がり卒業証書を受け取りました。
クラスのみんなが泣いています。
来賓も保護者も職員もみんな泣いています。