延命治療

大往生したけりゃ医療とかかわるな 中村仁一

延命治療で苦痛を強いられるのを防ぐにはどうしたらいいでしょうか。
それは、親が一定の年齢に達したら、死を頭の片隅に置いてかかわりを持つことだと思います。
人間はいつかは死ぬ存在ですから、明日死なれても後悔の少ないかかわり方をすることです。
そして、その日が来るまでそれを続けるということです。

よく、「点滴注射のおかげで1カ月生かしてもらった」などという話しを耳にします。
しかし、点滴注射の中身はブドウ糖が僅かばかり入ったスポーツドリンクより薄いミネラルウォーターです。
水だけ与えるので、自分の体を溶かしながら生きているのです。
脱水は、意識レベルが落ちでぼんやりした状態になり、不安や寂しさや恐ろしさから守ってくれる働きをすることは、すでに述べた通りです。
たとえ善意にしろ、せめて水だけでもと、無理に与えることは、この自然の仕組みに反し邪魔することになるのです。
赤ん坊が眠いのに、いろいろちょっかいを出されて眠らせてもらえないのに似ています。

確かに私たちは、何もせずに見守ることに慣れていません。
つらいことです。
だからといって、自分が苦しさやつらさから免れるために、相手に無用な苦通を与えていいという道理はありません。
そっとしておく思いやりもあるのです。
また、たとえ延命したとしても、悲しみはなくなりも減りもしません。
ただ先送りするだけなのです。