孤独死、大いにけっこう

うまいこと老いる生き方

92歳精神科医 孤独死、大いに結構や。誰にも迷惑かけないで、あの世に逝けるなんて最高やないの。

54歳精神科医 世間では孤独死は「寂しいもの」「絶対に避けるもの」とされています。

92歳 そうか? 孤独死ほど、潔い逝きかたはないと思うんやけど。入院してしまったら、手続きのあれこれで家族に迷惑をかけてしまう。家で寝たきりなんかになったら、大変な負担や。ある日ころっと亡くなっていれば、ひと手間もふた手間も減らすことができる。

54歳 先生は、徹頭徹尾、精神的に独立されていますね。でも、亡くなるときに一人でも本当に寂しいとは思わないんですか。

92歳 だって、大勢に看取ってもらったとして、誰かが手をつないで一緒にあの世に逝ってくれるわけじゃないやろ。それに、ドラマのように死ぬ間際まで意識があって、家族にお別れを言える人なんて、実はとっても少ない。今まで数えきれない患者さんを看取ったけれど、亡くなる何日も前から意識がほとんどなくなっていたり、逆についさっきまで元気だった人が急変して、家族が駆けつけたときには昏睡状態になっていたりするパターンも非常に多いね。これも孤独死の一種だとしたら、病院の中でもしょっちゅう起こっているんやね。

54歳 誰にも看取られずに一人で亡くなるという面だけ見れば、確かに病院といえど孤独死はしょっちゅうですね。