天国のお母さん

あなたがこの世を去って、もうすぐ一年ですね。
ちょうど桜が満開で、どこの公園でもお花見が賑やかなとき、あなたは一人旅立っていきました。
未婚の母として懸命に生きてきたあなた。
周りからの冷たい中傷にも耐え、仕事に子育てにと、自分の青春はどこかに忘れたかのようでしたね。

そんな中、あなたの人生の中で一番大切な人に出会い、恋をしました。
父のいない子供、未婚の母というレッテルを貼られたあなたの、その交際を快く思う人はいませんでした。
でも、陰ながらお互いを支えあい、生きていこうと決心しましたよね。
あなたが倒れ、意識不明になったとき、あの人はずっとあなたの傍を離れることなく付き添っていたんですよ。
眠ることも惜しんで。

あなたの身体が不自由になり、周りの人たちが見放しても、あの人は傍を離れず、ずっとあなたを温かく見守っていたのですよ。
毎日のお風呂、トイレ、食事の世話など、ありとあらゆる身の回りの世話をやさしく、温かく尽くしてくれたのですよ。
本当の夫以上に、長年の闘病に疲れ、あなたが一人旅立っていった朝、あの人はあなたの身体の傍でつぶやいていました。
「生まれ変わったら今度こそ、本当の夫婦になろうな・・・」
その眼にはたくさんの涙があふれ、胸がいたくなる光景でした。
私は、そんなあなたが羨ましい。
それ以上に愛されることは、決してないもの・・・。