即座に行動

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

31歳で屋久島にUターンしてきた岳南さんですが、あてもなく帰ってきてしまったのですから、やることもありません。
しばらくタクシーの運転手をしたり、畑仕事をしたりして過ごしました。
ある日、奥さんと散歩をしていると、川を流木が流れてきます。
屋久杉のかけらでした。
何の気なしにそれを拾い、ぼんやり眺めていると何かが訴えかけてくるような気がしたといいます。

この中に魚が隠れている。
そう感じた途端、即座に行動です。
岳南さんはその流木を乾かし、荒物屋に出向いてチェーンソーに使うやすり刃を2本購入しました。
ギザギザの歯の両端を炭火で熱く焼いて、延ばして、それぞれ違った形の刃にして4種類の刃物をつくりました。
それだけが資本、その刃は今も大事に使っています。

夢中になって彫り続けていると、やはり魚の姿になったといいます。
どこかで勉強したこともなく、まったくの自己流でした。

それからしばらく、岳南さんは手作りの刃で屋久杉を削ったり磨いたりしながら、作品を作っていました。
見に来た人に「それが気に入ったから欲しい」と言われて、作る傍から売れていくようなことが続きました。
そうしてだんだん屋久杉に魅せられていった岳南さんは、従来の屋久杉作品を見て回るようになり、不思議な体験をします。