全財産を投じて

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

アメリカのフロリダ州に「ザ・ギブ・キッズ・ワールド」というところがある。
生みの親であるヘンリー・ランドさんは、戦後、体1つでアメリカに渡った移民だった。
人一倍働いて、カルフォルニアにいくつかのホテルを所有する成功者になったランドさんは、ある日、あるきっかけで全財産を売却してしまう。
そしてそのお金で、フロリダに買えるだけの土地を買った。
そこに難病の子どもとその家族が無料で滞在できる施設を作ったのだ。
これがザ・ギブ・キッズ・ワールドである。

ランドさんがこの施設をつくったきっかけは何だろうか。
カルフォルニアのテーマパークに行くことを楽しみに、ランドさんのホテルを予約していた難病の少年が、その夢を叶える直前に亡くなったという知らせが入った。
両親は「早く連れていきたかったのだが、闘病費用のため、お金を貯めるのに時間がかかって・・・」と電話の向こうで泣き崩れた。
それを聞いてランドさんは、難病の子どもには、お金にも時間にも恵まれない人があることを知ったのだ。
そして、すぐさま全財産を投じて、難病の子供がお金がなくてもテーマパークで遊べる施設づくりを始めてしまう。