人の温もりが人を変える

ココロの架け橋 中野敏治

修学旅行に行ったときも、彼の周囲には必ずクラスの友達がいました。
彼の行動を見ていると、注意をすることが少しずつ少なくなっていきました。
それは、クラスメイトが彼に誤った行動をさせないようにしていたのです。

夏休み前に、校長として3年生全員と面接を行いました。
いよいよ彼の面接の番です。
彼はいつも会話にならない状態でしたが、この時、面接会場に入って来た時は静かに椅子に座りました。
「2つ教えて、1つは今一番楽しいこと、もう1つは今一番心配なこと。この2つを教えて」と、彼に声をかけると、クラスメイトのあたたかさを感じていた彼は「楽しいことはクラスの友達といるとき」と言ったのです。
その後何もしゃべらないまま、時間は過ぎました。
そしてぽつりと「心配なことは進路」というのです。
彼はずっと進路のことが心配だったのです。
仲間のあたたかさが彼の心を開いたのです。

面接後、彼は初めて自分から教科の先生に「勉強したいからプリントをください」と職員室に行きました。
職員室にいた先生方は、彼の言葉に驚きました。
人は変われるのです。