与えることが幸せにつながる

いのちの言葉 作家 曾野綾子

私たちは、いのちが大切なものだということを知っています。
しかし、果たして私たち日本人が本当にいのちを大事にしているかというと、そうとも思えない所があります。
今から10年以上前の時点で、日本の人工妊娠中絶が1億を超えるというのです。
つまり、私たちは日本人全体を全滅させられるほどの数を殺してきたことになります。
この数を考えるとき、私たちはいのちというものを愛し、大切にしてきたと言えるのでしょうか。

私たちが生きていく上で何が必要かと考えますと、まず言えるのは、人は受けるだけでなく、与えないといけないということです。
子どものときは、親から受けることばかりです。
赤ちゃんの時は、お母さんに抱かれて、おっぱいをもらう。
少し大きくなれば、ランドセルを買ってもらって、お小遣いをもらってと、「もらって」が続きます。
そうして大人になり、月給をもらうようになってはじめて、お母さんやお父さんに時計を贈ったりするようになります。
つまり、ここでようやく、受ける側から与える側に回るのです。

初代教会をつくった聖パウロの言葉に、「受けるよりは与えるほうが幸いである」とあります。
人間の尊厳や幸せは、受けることではないというのです。