不登校の彼女

ココロの架け橋 中野敏治

不登校気味の彼女は、卒業式の朝も来ていませんでした。
2年生の時に私のクラスに転校してきた彼女。
前の学校でいじめを受け、不登校になり私の学校に転校してきたのです。

卒業式当日の朝の会が終わったとき、クラスの子が私に駆け寄り、「彼女を迎えに行こう」と言ってきたのです。
迎えに行くには、あまりにも時間がありませんでした。
「いつ、彼女が来てもいいように準備をしておくから」と生徒に伝えました。
「もし卒業式に来られなくても、必ずみんなと同じ日に、ここで彼女の卒業式を行うから」とクラスの生徒に話をしました。
私の頭の中では、もし彼女が来るのが午後になったとしても、クラスメートと同じ式場で彼女の卒業式を行いたいと考えていました。

生徒たちは様々な思いを抱きながら、式場に向かいました。
彼女のことが気になり、式場に向かう途中でも窓の外を見る生徒もいました。
式場の前ついたとき、緊張のあまり誰一人話す生徒はいませんでした。
数分の沈黙の後、司会者の「卒業生入場」の言葉が式場に響きました。
私は、彼女用の胸花を胸につけ式場に入場しました。

卒業生全員に卒業証書が渡され、式歌が始まりました。
その時です。体育館のドアが開き彼女の姿が見えたのです。