下座に生きる 6

「おっさん、あのなあ・・」
「なんじゃ、卯一」少年は卯一といった。
「笑っちゃいかんぞ!」
「笑うもんか。早く言え。もったいぶるな!」
「やっぱ、やめとこ。おっさん、笑うからな・・」
「まあ、言いたくなければ言うな。ところで卯一、食事はどうした・・?」
「もうすぐ、賄いのおばさんが持ってきてくれるよ・・」
「だったら、わしが取りに行ってくるよ。手が空いているからな」
「おっさん、ついでにやかんももらってくれ。呑み込めないものだから、お茶を飲まんと吐いてしまうんだ・・」
「よっしゃ!」と炊事場に行くと、小さなお盆が渡されました。
鍋に入った粥、萎びた梅干し2個、小さく刻んだ沢庵が少々。

あまりにも少ない食事に驚いて「えっ、これだけですか。お汁はないんですか?」と聞くと、前にはスープも出していたが、少しでも脂気があると吐いてしまうので、今は出してないという。
「そうですか・・・」
納得できないままに食事を運ぶと、それでも卯一は待っていました。

「おっさん、一人では食べられん。そこについている匙でお粥をすくって口に入れてくれ。でも、たくさんだとむせてしまうから、ちょっとずつだよ」
三上さんは言われた通り、口に粥を運んでやりました。
それでも、1、2回匙で食べたら、もういらんと言いました。
「吐きそうだ、お茶をくれ」
「何だ、これぽっちか。もっと食べんと身体に悪いぞ」
「もうええわい。どっちみち俺は死ぬんだ。どうでもええ!」
「しょうがないなあ。でも、ここに置いておくから、後で食べたくなったらそう言え・・」と、三上さんはお盆を床に置いた。
「ごほごほ」むせていた卯一は、咳がやむと聞いた。
「おっさん、夕食はどうするんだ?」
「自分の体も動かん者が、人の心配するな!」
「でも、お腹すくだろ?」
「すいても、ないものは食べられんだろ・・」と、三上さんは突っぱねるように言うと、卯一が大きな声を上げた。