メメントモリ

メメントモリ(死を思え)という格言があります。
死を実感するために、中世の貴族たちは宴会のテーブルの上にドクロを飾っていたといいます。
これは「どうせいつか死んでしまうのだから、今をもっと楽しもう」という意味があったようです。

貴族というのは、自由のない人たちでした。
貴族以外の何者にもなれず、貴族に生まれたがゆえに「一生遊び暮らす」ことを強いられました。
何にでも自由に挑戦し、何にでもなれる可能性のある私たちとはまるで違います。

貴族に取って、「快楽こそ最も重要な仕事」だったと言えるかもしれません。
だからテーブルの上に飾ったドクロを見ながら、お腹いっぱいご馳走を食べ、満腹でもう食べられない状態になると、吐いてまた食べるという努力を懸命に繰り返したのです。

「死のイメージ」は、自分にとって一番重要なことを明らかにしてくれます。
病院のベッドに寝ていたり、死ぬほどの痛い目に合うと「もし自分が死んだら」などという考えが自然と湧いてきます。
究極的なマイナス思考には、これまでの価値観や人生観を見直そうとする作用があります。
究極的なマイナス思考に徹していると、やがて振り子の原理で、どんなにつまらないことでも素晴らしいことのように感じることができるのです。
「今、こうして生きている」という、普段は誰しもが無視しているようなことまでも、実に凄いことなのだと思えてしまいます。
そして、この貴重な時間をどう使えば、自分にとって一番有意義であるのかを考えたりします。

 そのために「1日1日を真剣に生きよう」とか「悔いのない人生にしよう」などという、普段ならちょっと恥ずかしいと思えるようなことを、平気で考えるようになるのです。