ホスピスケア

いのちの言葉 ホスピス医 柏木哲夫

アメリカでの末期ガン患者さんのケアを、チームでやりとげる、そんな体験を経て帰国した後、精神科医として働き始めました。
そこでも、内科や外科の医師たちから、末期ガン患者さんの精神的な問題について相談を受けたり、患者さんに直に接するようになりました。
そこで、我々もチームを組んでやろうと呼び掛けたところ、医者、ナース、牧師、ソーシャルワーカー、薬剤師、ボランティアの方々が集まってくれました。
こうして1973年、日本で初めてのホスピスケアがスタートしました。

当初は専門的な施設を持たず、一般病棟でチームを組み、末期ガン患者さんのケアにあたりました。
しかしそれは、なかなか難しいということが分かってきました。
一般病棟にはどうしても「治療優先」という考えがありますし、医者やナースの全員がホスピスケアに関心があるわけではありません。

一般病棟では、治療のパターン化というものがありました。
たとえば90歳のおばあちゃんが徐々に弱り、貧血が強くなってきたとき、私ならこのまま看取るのが一番だと考えます。
しかし、主治医はそれが当たり前のように、患者さんに輸血をするのです。