ハッピーバースデートゥーユー 2

そんな風にして、気づけばタクマ君は四歳になっていた。
ついこないだまでベビーベッドでバタバタしていたのになあ、感慨にふけっていた頃、「おねえちゃん・・・」妹から突然電話がかかってきた。
「最近タクマがね、まったく口をきいてくれないのよ」
声のトーンで妹が思いつめていることが分かった。
「そういう時期もあるのよ。あなたが厳しくし過ぎているんじゃない?」
軽い感じで答えると
「ううん・・・口をきいてくれないっていうかね、声を全く出してくれないのよ」
と妹は声を落とした。
「えっ、どれ位?」
「一カ月くらい・・・タクマの声を聞いていないの・・・」
「ええ!」

それは本当だった。
タクマ君は、私が会いに行くなり笑顔を見せてくれたし、飛行機の模型や絵本も持ってきてくれて一見いつも通りなんだけど、声を発しない。
いつもなら「おねえちゃん、おねえちゃん」って呼んでくれるのに。

妹はあれからタクマ君をいろんな病院に連れて行っているが、はっきりとした原因は分かっていないという。
ただ、どこに行っても言われるのが「精神的なものによる可能性が強い」ということ。
妹は「私の教育の仕方が悪かったのだ」と、自身を責めていた。
「そんなことはないよ。あなたはちゃんとタクマ君に愛情を注いであげていたもの。こんなのは一時的なものだよ」
私は慰め続けたが、妹から不安げな表情が消えることはなかった。