シャボン玉

野口雨情 シャボン玉

雨情は、なかなか子供が授からなかったそうです。
半ば諦めかけていたときに、女の子が授かりました。
結婚して8年目のことでした。
だからその子を、目の中にいれても痛くないほどに可愛がりました。

雨情はある時、童謡普及のために地方公演に出かけました。
ところが2歳にもならない女の子が伝染病にかかって、瀕死の重体になってしまいました。
公演先に届いた緊急連絡でそれを知った雨情は、気も動転して雨の中を停車場まで走りました。

雨情の祈りも空しく、待っていたのは娘さんの悲しい姿でした。
それからの雨情は浴びるように酒を飲みました。
酔って悲しみを忘れようとしたのです。
けれど忘れることはできません。
酔って、前後不覚になる日が続きました。

ところがある日、その子が夢の中に現れました。
その女の子は泣いていました。
涙にぬれた瞳をみたとき、雨情はハッとしました。
「ああ、このままでは天国に行っても娘に合わせる顔がない。お父さんは頑張ったよ、歯を食いしばって頑張ったよ。お前の分まで一所懸命生きてきたといえるようになろう」と決心したのです。

シャボン玉は雨情が娘さんへの思いを託した歌です。

シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた
シャボン玉消えた
飛ばずに消えた
生まれてすぐに
こわれて消えた
風風吹くな
シャボン玉飛ばそ