オムライス 2

生活に少しゆとりが出てきた今でも、貧しかった当時のことはよく思い出し、人に話したりします。
焼肉屋さんやお寿司屋さんに行っても何も思わないのに、いまだにオムライス屋さんに入った時だけは、ものすごく贅沢をしているような、何か悪いことをしているような、そんな気分になります。
オムライスを食べるのは、ず~っと特別な日でした。
誕生日はもちろん、試験の前日とか、何か目標を達成したときなどです。

現在私は、大阪の小さなバーで働いています。
あれから母を亡くし、父が失踪するという出来事を経験し、自暴自棄になってしまった私を、まるで両親のような表情で支えてくれたのが今のお店のオーナーでした。
「自分のお店だと思って、自由に使ってくれていいから」
そう言ってくれるオーナーのやさしさに応えるために、私は毎日精一杯働いていました。