ほんとうの愛とは

いのちの言葉 作家 曾野綾子

教会で働いていた未亡人が、なぜ段ボールを欲しがっているのか聞いてみました。
シスターは、段ボールに子どもの衣服を入れるとか、食器を置くとか、そんな返事を想像していました。
ところが、その未亡人は「雨が降ると、うちの子どもたちが寝ているところにザアザアと雨粒がかかるので、その段ボールを切って開いて、子どもたちにかけてやりたい」と言ったそうです。
そんな生活は、ほとんどの日本人には考えられないことです。

いのちを支えていくものは何か。
それは、おそらく愛なんだろうと思います。
聖書の中で、愛は2つのギリシア語で表されています。
1つは「フィリア」という言葉で、厳密に言うと「好きである」ことです。
これが、普段私たちが愛と言っているものに相当するでしょう。
でも、本当の愛は「アガベー」という言葉で表され、「理性の愛」と訳されています。

この理性の愛は、嫁姑の関係でたとえるとよく分かります。
自分の娘なら、風邪を引いたら薬を持っていくし、食欲がないといえば、好きなものをつくってあげるでしょう。
それを、お嫁さんにもしてあげてくださいというのです。
理性で、娘にするのと同じように嫁に接する。
そのように、理性で行う愛のみが本当のものだというわけです。
嘘でもいいから、そのように接してくださいというのです。