つらい気持ちから逃げると余計につらい

辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太

誰もがつらい気持ちはしたくない。
しかし、つらい気持ちから、自分を守ろうという意識が強くなりすぎると、かえって生きづらくなるという、逆説的な結果を招くことになる。
例えば退職、転職が癖のようになっている人がいる。
もちろん、会社を辞めるにはその人なりの理由がある。
希望の職種につけないとか、ああいう上司にはついてゆけないとか。
しかし、それはほんとうの理由だとは思えない。
ほんとうは、自分自身が傷つきたくない、つらい思いをしたくないということではなかったか。

新卒であれ、転職者であれ、入ってきて半年くらいはいわばお客様である。
きつく叱ったりすることはなく、「むしろ仕事の呑み込みが早いじゃないか、君のような人がうちに来てくれてよかった」と、褒めてもくれる。
しかし、1年もすれば上司の方もだんだん態度を変えてくる。
ちょうどその頃が、その人の辞め時なのだ。
きついことを言われたり、軽く扱われたりして気持ちがつらくなり、会社や上司の所為と言い訳をしているけれど、ほんとうは、こんなつらい気持ちから逃げ出したいから、辞表を出してしまうのではないのだろうか。

いくら上司から叱られようと、その会社で我慢していれば、5年後、10年後には、大きな顔もできるようになるのに・・。
今のつらさから逃げたばかりに、数年後、さらに大きなつらさを味わなければならない、そんなことも人生にはよくあるということだ。