おばあちゃんの宝物 1

両親は私が小さいころに離婚しました。
お父さんは酒とギャンブルで借金を重ねて、今ではどこにいるのか分かりません。
お母さんは早々に再婚しましたが、私はまだ幼かったこともあり、新しいお父さんをお父さんと思うことができず、中々新しい家になじめないままでいました。
そんな私を引き取ってくれたのが、千葉で一人暮らしをしていたおばあちゃんです。
小学校に入学して以来、私はおばあちゃんと二人で暮らしています。
おばあちゃんはとても気丈な人で「エリカはおばあちゃんが守ってやるからな!」と励ましてくれ、両親と離れ離れの私をまっすぐに育ててくれました。

私はおばあちゃんのことが大好きで、毎年5月の誕生日には必ずお祝いをしました。
プレゼントを買うお金は持っていなかったから、ある年は近所の河原に咲いているシロツメ草をブレスレットにして贈りました。
またある年は、チラシの裏にマジックで「エリカの肩たたき券」と書いたものを贈ると、おばあちゃんはその券をうれしそうに眺めながら「ばあちゃんの肩は、まだそんなに凝っていないわ!」と笑いました。
全然素直でないおばあちゃんだったけど、そんな時はいつもよりずっと優しい声で「エリちゃん、ありがとね」と言ってくれました。