いったん希望を受け入れてから

ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛

高額な代替医療を止められるケースばかりではない。
「先生、助からないのは分かっているんです。でも何か常に前向きなことをしていないと気が済まないんです。ビタミンだけは続けたい。生きている限り・・・」
昔の私であれば「そうは言っても」と、強引に止めようとしていただろう。
しかし、何かにつかまっていないとどうにかなってしまうのではないかという、得体のしれない不安に抗い、もがいている患者さんの気持ちを考えれば、それを否定すればするほど逆効果になることが多いのである。

「なるほど、分かりました。そういうことをご希望でしたら、一度その分野の専門家に相談してもいいかもしれません。紹介状も書きましょう。ただそれをすることによって、かえって体を弱らせたり傷つけたりしまうと判断した時点で、私が良いとお勧めできる方法へ変更していただくよう、お勧めするかもしれません。体調を見ながら相談して進めていきましょう」

いったんは相手の思いを受け止めて、希望を受け入れた上で話しを進めていけば、その後はこちらの提案も受け入れてくれるようになることが多い。