いい所も悪い所も自分らしさ

辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太

動作がノロマ、口下手、そそっかしい、女性なのに女らしくない、男性なのにめそめそしている。
こんなことでは人から嫌われるのではないか、人から疎んじられ、馬鹿にされるのではないかと考える。
人の持つ劣等感やコンプレックスには、そういう意識が潜んでいることが多く、自分をクヨクヨ思い悩むことになる。

しかし、ほとんどの場合はたんなる「思い込み」である。
周りの人たちは、そんなあなたを嫌ってもいなければ、馬鹿にもしていない。
変な言い方になるが、周りの人は周りの人で、それぞれ自分の劣等感やコンプレックスと闘っているのであり、他人の劣等感などには気が回らないのである。
だから、劣等感やコンプレックスなど「幻想にすぎない」と思っていればいいのである。

よく自分らしく生きようなどと言うが、ここで注意してほしいのは、あなたが「自分はここが人よりも劣っている、これが自分の弱点だ」と思っているものを含めて、それがあなたの「自分らしさ」という点だ。
自分らしさは、長所や誇れるものばかりで出来上がっているわけではない。
そのことを理解した上で、いい所悪い所すべて含めて「自分らしく生きよう」と考えてこそ、「自分らしい生き方」につながるのだ。