下座に生きる 神渡良平
車いすのカメラマン、田島隆宏さんが、蛾の一種であるホウジャクがコスモスの花からはちみつを吸おうとしている写真を捉えました。
ホウジャクは2秒と同じ花の蜜を吸っていません。
この瞬間を写真に残そうと、1日に3時間、雨の日も暑い日も待ち続けて2週間目にやっと撮れた写真です。
体が不自由になり、ベッド生活を強いられるようになった千葉県の婦人は、同じ境遇に陥っただけに、田島さんの写真に励まされたそうです。
夫人が震える手で懸命に描いたと思われる手紙にはこうありました。
「辛くってくじけそうになることもあります。そんな時、田島さんが撮った写真を見ます。すると勇気が湧いてくるのです。田島さんもあの体で懸命に生きていらっしゃるじゃないかと思うと、わたしもがんばろうと思うのです。わたしも生きていてよかったといえるようになりたいと思います」
また田島さんの詩集を読んだ方からはこんな手紙が来ました。
「詩集を涙しながら拝読しました。ついつい、ない物ねだりをし、不平不満だらけになっている自分を発見しました。上を見たらきりがないし、自分は不遇だと思ってしまいます。幸福とは何かと確信できるきっかけを作ってくださってありがとうございました」
人々からの手紙に田島さんは励まされ、ますます精魂込めて写真を撮るようになったそうです。